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障害福祉サービス事業所の運営において、「虐待防止」は最も重要な運営基準の一つです。
虐待防止措置未実施減算は、虐待防止の為の取り組みが適切に行われていない場合に、所定単位数の1%が減算されるものです。
令和6年度の報酬改定で新設されました。
以下の取り組みができていない場合に適用されます。
・1年に1回以上、虐待防止委員会を開催していない
・虐待防止の為の研修を定期的に実施していない。また記録を残していない
・虐待防止措置(虐待防止委員会の開催、虐待防止のための研修実施)を適切に実施するための担当者を配置していない。
取り組みができているか否かは運営指導で確認されます。
口頭でやりましたと伝えても認められません。記録は必ず整備しておきましょう。
本記事では、障害福祉事業所の指定申請や運営支援を行う行政書士が、虐待防止措置未実施減算の概要や要件、実地指導で確認されるポイントについてわかりやすく解説します。
虐待防止委員会の役割は、
①虐待防止の為の計画作り
②虐待防止の為のチェックとモニタリング
③虐待発生後の検証と再発防止策の検討 となります。
虐待防止措置未実施減算とは
虐待防止措置未実施減算とは、障害福祉サービス事業者等が法令で定められた虐待防止措置を講じていない場合に適用される減算制度です。
利用者の権利擁護を目的として設けられており、虐待を未然に防止するための体制整備を事業所に義務付けています。
減算が適用されると、サービス報酬が減額されるだけでなく、実地指導や監査の際に重点的な確認対象となる場合があります。
減算率
虐待防止措置未実施減算の減算率は、
所定単位数の1%減算
です。
1%という数字だけを見ると小さく感じるかもしれませんが、利用者数が多い事業所では年間を通じて大きな減収となる可能性があります。
また、減算以上に事業所の運営体制への信頼低下につながることが大きなリスクです。
虐待防止措置未実施減算の算定例
例えば、利用者20名、月報酬300万円の場合
300万円×1%=3万円/月
年間36万円の減収
となります。
対象となる障害福祉サービス
虐待防止措置未実施減算は、原則として多くの障害福祉サービスが対象となります。
主な対象サービスは以下のとおりです。
障害福祉サービス
- 居宅介護
- 重度訪問介護
- 同行援護
- 行動援護
- 療養介護
- 生活介護
- 短期入所
- 施設入所支援
- 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型
- 就労継続支援B型
- 就労定着支援
- 自立生活援助
- 共同生活援助(グループホーム)
障害児通所支援等
- 児童発達支援
- 放課後等デイサービス
- 保育所等訪問支援
- 居宅訪問型児童発達支援
- 福祉型障害児入所施設
- 医療型障害児入所施設
減算となる要件とタイミングと対応
次の措置のいずれかが未実施の場合、虐待防止措置未実施減算の対象となる可能性があります。
減算となるタイミングとしては、
「事実が生じた場合」に「事実が生じた月の翌月」から「改善が認められた月」までの期間、利用者全員に対し基本報酬の減算となります。
ここで「事実が生じた場合とは」、運営基準を満たしていない状況が確認されたことを指します。例えば運営指導で令和7年5月1日に運営基準が満たしていないと確認された場合、
令和7年6月のサービス提供分から減算となります。
減算事由が認められた場合は、
速やかに改善計画を都道府県知事に提出した後、事実が生じた月から3か月後に改善計画に基づく改善状況を都道府県知事に報告する必要があります。
1. 虐待防止委員会を1年に1回以上開催していない
事業所は虐待防止委員会を定期的に開催しなければなりません。
委員会は法人単位での開催でも問題ありません。
また、委員会で検討した内容を職員へ周知することも必要です。
委員会議事録が作成されていない場合、実施していたとしても証明できないため注意が必要です。
議事録は委員会ごとに作成します。
下記①~③の手順で虐待防止委員会の組織を作り、委員会を年1回以上開催しなければなりません。
①虐待防止委員会の組織体制図を作成する
身体拘束委員会と一体的な運営も可能です。
②議事録を作成。
内容は年間計画作成や進捗報告や、虐待やその疑い、あるいは虐待防止未遂案件の報告や改善策の協議などを行います。
③通知文書をつくり、全職員に通知する
委員会の協議報告だけでなく、倫理綱領や行動指針、虐待防止マニュアルなども全職員への周知を徹底しましょう。周知は全職員が読める場所に掲示でもOKです。
2. 虐待防止のための指針を整備していない
虐待防止指針は事業所運営における重要な内部規程です。
一般的には以下の内容を盛り込みます。
- 虐待防止に関する基本方針
- 虐待発生時の対応方法
- 報告体制
- 職員研修に関する事項
- 再発防止策
- 苦情解決体制
運営指導では内容だけでなく、実際に運用されているかも確認されます。
3. 虐待防止のための研修を定期的に実施していない
1年に1回以上研修を実施する必要があります。
特に新規採用職員に対する研修や定期研修の実施状況は重要な確認事項です。
研修を行った場合は、
- 研修資料
- 参加者名簿
- 実施記録
を保存しておきましょう。
4. 虐待防止担当者を配置していない
虐待防止の推進を担う担当者を定める必要があります。
管理者やサービス管理責任者、児童発達支援管理責任者などが担当するケースが一般的です。
運営指導で特に確認されるポイント
運営指導では、以下の書類の提出や提示を求められることがあります。
確認される主な資料
- 虐待防止指針
- 虐待防止委員会議事録
- 研修実施記録
- 研修資料
- 出席者名簿
- 責任者選任記録
- 職員への周知資料
特に、
委員会を開催したが議事録がない
研修は行ったが出席簿がない
というケースは実地指導で指摘されやすい傾向があります。
運営上は実施していても、記録がなければ未実施と判断される可能性があります。
新規指定事業所が見落としやすいポイント
新規開業時には利用者獲得や人員確保に意識が向きがちですが、虐待防止体制の整備も指定後すぐに求められます。
特に以下は準備漏れが多い項目です。
- 虐待防止指針の未作成
- 委員会開催計画の未策定
- 年間研修計画の未整備
- 研修記録様式の未準備
- 責任者選任記録の未作成
指定申請時から運営を見据えた体制づくりが重要です。
行政書士が考える実務上の対策
虐待防止措置未実施減算への対策は難しいものではありません。
重要なのは、
「実施すること」と「証拠を残すこと」
です。
具体的には、
・虐待防止指針を整備する
・年間研修計画を作成する
・虐待防止委員会を定期開催する
・委員会議事録を作成する
・研修資料と出席簿を保存する
・虐待防止担当者を明確化する
といった基本事項を継続的に運用することが重要です。
まとめ
虐待防止措置未実施減算は、単なる1%の減算ではありません。
運営指導での指摘や運営基準違反、事業所の信頼低下につながる可能性があります。
改善が行われない場合には運営基準違反として行政処分等につながる可能性があります。
障害福祉事業所では、
- 虐待防止委員会の開催
- 虐待防止指針の整備
- 職員研修の実施
- 虐待防止担当者の配置
を確実に行い、記録として残すことが重要です。
当事務所では、障害福祉サービス事業所向けに指定申請支援だけでなく、虐待防止指針の作成支援、各種委員会資料の整備、運営指導対策までサポートしております。
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